004: 乱れる
いつの間にこんなにハマっていたのだろう。
苛々して手の付け様のない己の精神状態に、ラビは舌打ちをした。手の震えが止まらない。
アレン。
ティムキャンピーの記録していた映像が瞼の裏をちらついて、目を閉じる事すら出来ない。イノセンスを、左腕を失ったアレン。傷付き過ぎて動かぬ身体。それでも尚逸れぬ銀色の視線。
アレン。アレン。
東アジア支部の連中が彼を連れ戻ったと聞いた。
イノセンスを失ったアレンは、この先を生きてくれるだろうか。
確証が持てなかった。彼の中での左眼の重さを感じているから。エクソシストという大義名分を失って彼に残るのは、愛した養父を殺した事実だけだ。
心のどこかで、これでアレンを戦場から遠ざけられると思う自分がいる。あんな危うい戦い方をするアレンを、もう見なくて済むと。死を恐れず敵を見据えた彼の眼差しにゾッとした。
苛々する。自分に、アレンに。
ああ、本当に、いつの間にこんなにハマっていたのか。歴史を記録する者としてこんな事ではいけないのに。
分かっているさ、ブックマンのジジィ。自分の未熟さも愚かさも。
それでも、隣に立って共に歩き戦い笑った者を愛し心配せずにいられる程、俺は時を生きていない。諦められないし慣れていない。
アレン。アレン。アレン。
どうか無事で。そして生きて。いつか俺の隣でもう一度笑って。
こんな陳腐な願い、歴史上のどこにでもあって、世界中のどれだけの人が持つのかも数え切れないだろうけれど。まさか自分がそれを持つとは思わなかったけれど。
アレン。どうか。
時間軸は7巻あたり、アレンがティキに殺されかけた辺のラビさんの混乱っぷりです。ぎゃーって思ったのをわーっとぶつけた書き殴りな代物ですが、結構気に入ってたんでサルベージ。
ブックマンの仲間に対する割り切りは諦めとは多分ちょっと違うと思うんですが、まぁこの時点でのラビはそう思ってるってことで。
アレンアレンばっか言っててキモくてすいません。
(2009/07/26 UP)
back