*読み難そうな漢字には、オンマウスで読みが出るようにしてあります。*

061: 誓い

王子=ルーファン




 河の流れが足元のずっと下方でたぷりたぷりとたゆたっている。大きな屋敷のような船内を、ルーファンはカイルを伴って歩いていた。
 バロウズ家と決別し、に彼自身が旗頭となって軍を起すことになった。ゴドウィン家を倒し、囚われの身となったリムスレーアを救い出す為に。
 その一先ず拠点となったラフトフリートのラージャ達が自分の戦装束調えてくれたという。折角なので着替えてみては、という勧めに従って、衣装が置いてある小部屋に向かっているところだ。
「ごめん、カイル。着替えの手伝いなんか頼んでしまって」
「いーえー。戦装束なんてのは一人じゃ着にくいようなのばっかですからね。王子の為なら俺の手の一つや二つ、喜んでお貸ししますよ。あ、この部屋ですよ、王子」
 カイルが開けてくれた戸を潜り、部屋をぐるりと見渡す。戸棚が二つ、低い机が一つあり、その机の上に衣装が綺麗に畳んで置かれていた。黒を基調に鮮やかな赤と青の配色されたそれにルーファンは軽く目を瞠り、そっと布地に触れた。
「へー、古式ゆかしくてカッコイイじゃないですか。さすがラージャ殿、良い見立てしてますね」
 カイルは衣装を全て広げて確認し、最初はこれですよー、と下穿きを差し出した。そして衣装を見詰めたまま難しい顔をしている主に首を傾げる。
「王子?」
「あ、ごめん。ちょっと待って」
 慣れ親しんだ服を脱ぎ、カイルの指示に従って衣装を身に着けていく。胸当てや篭手には金属の板が仕込んであり、身軽だが防御を考えた構造になっていた。上衣は羽織ると三節根のホルスターの邪魔になったので、仕方なく腰に巻くことにする。
「似合いますよ、王子」
「ありがとう」
 満面の笑みでの賛美に礼の言葉を返し、ルーファンは胸に手を当てた。
 太陽の赤と河の青を鮮やかに映した戦装束。
 純粋な赤と青の組み合わせは王族のみが身に纏ってきた。但し、ルーファン自身はこれまでこの組み合わせを身に付けたことはなかった。
 これは民の望みだと思った。国を思う、守るべき祖国の民の。
「カイル」
「はい?」
「絶対に、リムを助け出して、この国を取り戻そう」
 にやり、とカイルが笑んだ。
「もちろんですよ、王子!」
 ルーファンは赤い翻して歩き出した。
 祖国を背負って。




  了


 王子の正装の色の話。
 先日絵茶に参加させて頂いた時に「王子赤色似合うのに王族服はなんでオレンジなんだろう。赤は太陽の色だから(王位継承権の無い王子は)着なかったとかあるのかなー」という話がちょっと出まして。そこから広がった妄想です。
 単純に赤、てことだと旅装が赤を思いっきり使ってあるので、赤と青の組み合わせ、ということにしてみました。ユーラム君とかは赤と群青色とかでちょっと色味が違うんだよきっと!てことで一つよろしくお願いします。
 初王子、初カイルでした。
 王子の正装が古式ゆかしいとか上衣羽織ると邪魔だから腰に巻いたとかは、適当に書いてますのでご了承下さいー。

(2007/04/08 UP)

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