「暑い!」
「暑いのは割といつもだろう」
「暑いー!」
「叫ばないで下さい
鬱陶しい」
「暑いーー!」
「だからうるさいわよ」
方々から邪険にされてもエメットは止まらなかった。場所はいつものパブの、定位置となりつつあるテーブル。イヴァリースは乾季の真っ只中で、空気は痛いほどに熱せられ、そよりとも動かぬ空気に熱は更にこもっていく。その熱に
煽られるように騒ぐエメットといつもと違い
剣呑ささえ漂う反応を返すメンバーと周囲の他の客への
気遣いに、一番幼いマーシュがおろおろする。
「あ、あのエメット、皆も暑いんだし騒いでも変わらないし、もうちょっと声のトーンを」
「エメット、マーシュに気遣わせるなんてダメクポ。情けないクポ」
マーシュの取り成しもモンブランのたしなめも、しかしエメットは聞いていなかった。
「よし、川に行こう」
「え」
「あら、ホントにたまには良いコト言うじゃない。賛成」
「そうですね。仕事の予定もありませんし、ここで腐っているよりは余程マシですね」
「え」
「ムムム…モグも暑いから大賛成クポー!」
「あの」
「バカも役に立つことがあるンだな」
「俺はいつも大活躍してるじゃねーか!」
「どこがだよ」
「全部だよ」
「客観的には騒いでるだけですよ。ほら、早く準備して行きましょう。暑苦しい」
「あの、ちょっと」
既に席を立ち、荷物を取りに
或いは買出しに出ようとしている仲間達の後方に、取り残されたようにマーシュは固まっていた。
「どうしたの、マーシュ。そういえばさっきから何か言い掛けてたみたいだけど」
「川…行って何するの…?」
何故か妙に気まずげなマーシュに、けれどエメットは気付く様子もなく浮かれ気味に彼を急かす。
「遊ぶに決まってるだろ、川遊び! ほら行くぞ」
「…て何がいるの?」
「薄手の衣と
下穿きと
手拭と、お弁当かしら」
「あ、もしかして泳げないとか?」
ぶんぶんぶんと激しく首が横に振られる。
「お、泳げるよ」
15メートルくらいなら、心の中でマーシュは付け足す。
「つべこべ言ってないでさっさと行くぞ!」
マーシュは
痺れを切らしたエメットに首を抱え込まれ引きずられていく。ぽんと腕を叩かれ見ればマッケンローで、彼にしては珍しい柔らかな笑みを浮かべた。
「楽しみましょう、マーシュ」
「お弁当買ってくるクポー」
うきうきと出掛けていくモンブランとカロリーヌを見送って、マーシュはエメットの指導の下、荷物作りを開始した。時々横合いから、嘘を教えるナと訂正が入った。
着替えと少しの
玩具とお弁当を持って。
さあ、遊びに行こう!
了
多分3年くらい前の拍手お礼文です。バカやってるナッツクラン大好き。
(2010/01/03 UP)
back