繰り返し名を呼ばれて、目が覚めた。
「アレン、アレン」
「……ん」
重い
瞼を持ち上げると目の前にはラビの顔があった。視線が合うと、ひそめられていた眉根から力が抜けて陰の色合いは完全に
拭い去られた。にこり、いつものように笑う。
「ラビ…?」
「うなされてたさ」
「え……。あぁ…。夢、を見ていた気がします」
ゆるりと上体を起こして目元を覆う。脳にこびり付いている何かの
残滓が妙な
逼迫感を主張していた。閉じた瞼の裏で意味不明な形の波紋がぐにゃりぐにゃりと広がっていく。
「アレン」
「はい?」
「手、
繋ご」
お手をどうぞとばかりに差し出された両手を、アレンは思わず凝視する。
「ラビ?」
「良いから。ほら」
ラビはアレンの両手を取って勢いよくベッドに倒れ込む。スプリングがぎちりと鈍く鳴って二人の身体を押し戻した。
向かい合って両手を繋いで。まるで二人で祈りを捧げている様な格好だ。
「おやすみ、アレン。今度はきっと良い夢見れるさ」
繋いだ手の上にキスをして、次いでアレンの額にもキスをする。
「ラビと手を繋いでるから?」
「そ。俺のハンドパワーを信じなさい」
ウィンク付きで言われて思わずアレンは
噴き出す。それだけでは足らず手を繋いだまま腹を抱えて笑い出す。
「アーレーンーー」
「あははははは、ごっ、ごめんなさい」
ごつりと押し付けられた頭に謝って、アレンは肩を震わせながらも寝心地の良い場所を探してもぞりと
身動ぐ。
「おやすみ、ラビ」
良い夢を。
了
別館の拍手お礼文でした。
(2010/01/03 UP)
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