*読み難そうな漢字には、オンマウスで読みが出るようにしてあります。*







 はぁ、と吐き出した息はすぐに白く濁って流れていった。標高の高さ故に周囲には目立った木も無く、白い冷気を振りまきながら、吹きっさらしの風が切り付けるように頬を耳をすり抜けてゆく。熱い茶を入れていた手の中のカップも既に冷えてしまっていた。念入りに防寒対策をしてきたが、それでも歯の根が噛み合わぬ程に寒い。
 がたがたと震えながら、それでも一心に見詰める視線の先で、それは始まった。
 さっと一瞬矢のように光の筋が射し、刷毛塗り替えられるように空が白く染まってゆく。灰色だった雲は薔薇色に照らされ、暗色のみだった景色が息を吐く間に極彩色に変化していく。
 そして、光が溢れた
 刻々と移ろう光景にクランの皆が息を飲んだ。知らず、感嘆の声が零れ落ちる。
「すげーな、ルッソ」
 少年の隣に立っていた亜人種の青年が興奮に浮ついた声で言った。
「うん、想像以上だ。すごい」
 目を輝かせて目の前の光景を食い入るように見詰めながら、ルッソも興奮した声で答えた。
「寒い思いして待った甲斐は、一応あったかしらね」
「だろ?」
 負けん気の強いアデルの言葉に、ルッソは嬉しそうに笑う。
「ここ、夕日もきれいだったからさ、朝日もきれいかなーと思ってたんだ」
「新しい年を日の出を見ながら祝う、というのもなかなか良いものですね。新鮮な気持ちで1年を過ごせそうです」
「皆も寒いのに付き合ってくれてありがとう。あとどれだけこっちに居られるか分かんないけどさ、とりあえず今年もよろしく!」
「あァ、よろしくな」
「よろしくお願いします」
「仕方ないからよろしくされてあげるわよ」
 言葉が途切れ、笑顔が零れる。
 寒い寒いと言いながら、ガリークランは雪道を押し合いへし合い、時折笑い声を上げつつ暖かな街へと下りていった。




  了



 多分1年くらい前の拍手お礼文です。一応FFTA2書いたことあったんですね…。忘れてた。

(2010/01/03 UP)

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