*読み難そうな漢字には、オンマウスで読みが出るようにしてあります。*
スウィーツ
「ほい、プレゼント」
という言葉と共にアレンの両手の上に乗せられたのは、淡い水色の紙で可愛らしくラッピングされた品物だった。薄く透けた包み紙を通して見れば、小さな円筒状の缶とそれと同じくらいのサイズのぬいぐるみが一つずつ入っているようだ。
自分にとって意味不明なものから視線を上げて、アレンは目前のラビを見上げた。
「何ですか、これ?」
「だからプレゼント。オランダ土産さね」
ラビはにこりと笑った。そこには一点の曇りもない。アレンが深々と溜息をつくのにも全く動じない。
「ラビ…、男相手にこういうものをあげても喜ばれないんじゃないかとか、普通思いませんか?」
「そう? いいじゃん可愛いっしょ。あ、その缶は飴な。美味しかったさ〜」
ラビはマフラーを外して手持ち無沙汰に両手で弄び、ね?と軽く首を傾げた。こんなラッピングまでしなくても、と言えば、プレゼントなんだから良いのだと返される。それでも尚渋るアレンに少し苦笑し、折角だから貰ってよと言い置いて、彼は去ってしまった。
アレンはプレゼントを両手で持ったまま、しばらくそこから動けなかった。
数分後、アレンは自室に戻ってきていた。どこかぼんやりとした様子で、ベッドに腰掛け、青い包み紙のプレゼントを未だ両手で持っている。のろのろとした動作で包みを解いて中身を取り出した。現れた、空色の缶と丸い目のウサギのぬいぐるみ。
黙したままアレンとウサギが見詰め合う。やがて、ぐらり、と上体を傾げたのはアレンの方だった。折るように身を曲げ、垂れ下がった頭がウサギと缶にこつりと当たる。呻く様にあぁと息が零れる。
「見抜かれてるのかな」
呟いた声音に滲んだのは、悔しさと恥ずかしさと僅かな嬉しさ。顔を覆う髪がさらりと流れて露わになった耳は薄らと赤い。
アレンは可愛いものや甘いものが好きだった。幼少期を貧乏な旅生活で過ごしたので、所謂嗜好品や飾り等に対しての憧れめいた感情が強いのだ。その後、食にうるさい師匠のおかげで果物や甘味に対する引け目は大分薄れたが、ぬいぐるみやアクセサリー等は未だに自分で持つ気がしない。
その辺りの事を話したり素振りを見せたりした覚えはないのだけれど。
アレンは上体を更に横に傾け、ぱたりとベッドに転がった。悔しさに眉と口が歪めながら、両手を胸近くに引き寄せる。
「ありがとう、ラビ」
歪んだままの唇で、それでも嬉しそうに囁いた。
アレンは、食に関しては質より量な子だと思います。美味しければ嬉しいけど、不味くても食べれる、みたいな。旅生活と、イノセンス覚醒後は単純に量的な問題で。
あと可愛いもの綺麗なものに関しては、見栄っ張りなので隠してます。バレても隠します。ラビに強制的に押し付けられてやっと手元に残します。
ちなみにウサギはポケットサイズ。隠し易いように。持ち運びやすいように。
(2006/02/25 UP)
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