*読み難そうな漢字には、オンマウスで読みが出るようにしてあります。*

010: うたがい

坊=セオ





「セオ・マクドール。セオ…。どこにでもある名前だよなぁ」
 独り語ちて、テッドは再び寝返りを打つ。寝静まった街、自分が身動ぎする音しか聞こえぬ家の中に、言葉だけが宙に浮く。
 何度も何度も繰り返してみる。妙に気になって仕方の無い、親友の名前。
「どこにでもある、よなぁ」
 自分に言い聞かせるように、もう一度呟く。初めてその名を聞いた時、記憶のを何かが閃いていった気がしたのだ。以来親友の名を口にして過ぎるのは、三百年前に会ったはずの彼の人の残影。
 けれど。

「まさか、な」

 どこか納得し切れずに、けれど無理矢理にテッドは呟く。
 そうだ、そんなはずはない。だって三百年前だ。そもそも自分は彼の人の顔も声も覚えていない、名も知らない。

 それなのに消えないこの予感めいたものは、一体何なのだろうか…。







042: 名前」から微妙に繋がってます。坊っさんをからかう裏でこんなことを考えてました、というテッドさん。
 本文中に書いたように、ウチのテッドさんは坊っさんに気付きません。300年経ってますし、当時の記憶は混乱気味で、覚えているのは「もう一度会うと約束をした人がいる」ということくらい。その辺のことは別のお題で。(とか言ってネタを小出しにしてお題の数を稼ぐ)(せこい)

(2006/05/23 UP)

  back